カルテの記載ミスが発覚した場合、返戻どころか保険医停止処分につながるケースがあります。
歯科記録の書き方を語るうえで外せないのが、歯科医師法第23条の存在です。同条では「歯科医師は、診療したときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない」と定められており、記載は任意ではなく法律上の義務です 。また、診療録(カルテ)は完結の日から5年間の保存が義務付けられており、これは保険医療機関及び保険医療養担当規則第9条、医師法第24条においても明記されています 。 studygroup-aohon(https://www.studygroup-aohon.com/post/%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%86%E8%A8%98%E8%BC%89%E3%81%AE%E5%9F%BA%E6%9C%AC)
保存義務を怠った場合や記載不備が発覚した場合、厚生局の個別指導・監査の対象となります。これが重要なポイントです。指導医療官は「カルテに記載されていないものは、行っていないのと同じ」という判断基準で確認を行うため、実際に処置を行っても記録がなければ算定根拠が消えてしまいます 。 curly-moji-5366.capoo(https://curly-moji-5366.capoo.jp/iinhpsozai/kobetutaisaku.pdf)
診療録の保存期間は自由診療でも同様に5年間が求められ、その他の帳簿・書類は3年間となっています 。記録の種類ごとに保存年限が異なる点は、見落とされがちです。 gigaplus.makeshop(https://gigaplus.makeshop.jp/shahoken/downloadDoc/160604-sample.pdf)
参考リンク(法的義務の詳細)。
厚生労働省|診療録の保存年限に係る現行法令上の規定(PDF)
カルテ記載には守るべき基本が8つあります。順に確認しましょう 。 gc(https://www.gc.dental/japan/member/hoken/chap04/contents0406)
| ルール | 詳細 | 注意点 |
|---|---|---|
| ① 遅滞なく記載 | 診療のたびに即日記入 | 後日まとめて記入は不可 |
| ② 筆記具の指定 | ボールペン使用が原則 | 鉛筆での記載は禁止 |
| ③ 訂正方法 | 二重線+訂正印で訂正 | 修正液・修正テープは使用禁止 |
| ④ 読める字で記入 | 第三者が判読できる字体 | 省略・記号の独自使用は不可 |
| ⑤ 署名または記名押印 | 診療した歯科医師本人が行う | 受付代理入力の場合も医師が確認・押印 |
| ⑥ 正式傷病名を使用 | 定められた略記号・正式名称を使う | 独自略称は監査時に指摘される |
| ⑦ 診療の流れに沿って記載 | 処置の順序どおりに記録 | 前後を入れ替えない |
| ⑧ 行間を空けない | 欄外記載・行間空白は禁止 | 後から追記できる余白を残さない |
これが基本の8原則です。特に③の訂正ルールは現場でミスが起きやすい部分です。修正テープで塗りつぶしたカルテは、改ざんと見なされるリスクがあります。個別指導で最も多い指摘事項の一つが「訂正方法の誤り」であり、1件の不備が算定全体の信頼性に影響します 。 kouseikyoku.mhlw.go(https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tohoku/shido_kansa/shidoubumonn/documents/h28-shika.pdf)
電子カルテ(レセコン)を使用している場合でも、担当歯科医師がプリントアウト後に内容を確認し、署名または記名押印する必要があります 。電子だから署名不要、ということはありません。 xn--zqs94lz4l2ooqzu(https://xn--zqs94lz4l2ooqzu.com/shika-hokenshidou4.html)
近年、保険診療においてもSOAP形式でのカルテ記載が推奨されています 。SOAPとは以下の4項目の頭文字です。 note(https://note.com/kartemaker/n/nca8a115538ad)
- S(Subjective) :患者さんの言葉による主訴・症状の訴え
- O(Objective) :歯科的検査結果・視診・触診・X線所見など客観的データ
- A(Assessment) :SとOから導かれるアセスメント(評価・診断の根拠)
- P(Plan) :今後の治療計画・処置内容
SOAPはPOMR(問題志向型診療録)に基づく記録方式です 。「なぜその処置を選択したのか」「その根拠は何か」を第三者が読んで理解できる形で残すことが目的で、保険診療の算定根拠としても非常に有効です 。 note(https://note.com/kartemaker/n/nd709c5802c6e)
主訴(S)は患者さんの言葉のまま記録するのが原則です。例えば「前歯がピリッとする」という訴えを「知覚過敏」と書き換えてしまうと、患者本人の感覚情報が失われます 。次回来院時に同じ言葉で確認することで、患者との信頼関係も構築されます。これは使えそうです。 academy.doctorbook(https://academy.doctorbook.jp/programs/235)
O(客観的情報)には、できる限り数値を入れましょう。「歯肉発赤あり」よりも「BOP陽性4/6部位、PPD5mm以上3か所」という記録のほうが、経過観察の変化を把握しやすく、指導時にも説得力があります 。数字が基本です。 academy.doctorbook(https://academy.doctorbook.jp/programs/235)
歯科衛生士業務記録は、単なるメモではありません。保険算定の根拠になる法的文書です。歯科衛生実地指導料・訪問歯科衛生指導料・在宅等療養患者専門的口腔衛生処置などの点数を算定するには、業務記録の適切な作成が義務付けられています 。 dhken(https://dhken.jp/course/23063/details)
業務記録に記載すべき主な内容は以下のとおりです 。 dental-happy(https://dental-happy.net/content/570)
- 患者の氏名・ID・年齢などの基本情報
- 主訴(患者自身の言葉で記載)
- TBIの実施部位・内容・使用器具・患者の反応
- 処置内容(スケーリング・PMTC・フッ化物塗布などの具体的記録)
- 口腔外・口腔内の異常所見(できもの・口角荒れ・顎関節の状態など)
- 次回来院時の予定フォロー内容
特に「次回行うこと」欄を設けることで、業務の継続性が高まります 。記録が途切れていると、患者の口腔状態の変化が追えなくなるため、長期的なメインテナンス管理に影響が出ます。 academy.doctorbook(https://academy.doctorbook.jp/programs/235)
業務記録の書式は、日本歯科衛生士会から指針が出ており、必要事項を網羅した様式例が公開されています 。クリニック独自の書式を作成する場合も、この指針に基づいて記載項目を設計するのが安全です。 jdha.or(https://www.jdha.or.jp/pdf/contents/info/20240515.pdf)
参考リンク(日本歯科衛生士会の業務記録指針PDF)。
日本歯科衛生士会|歯科衛生士の業務記録に関する指針(PDF)
厚生局の個別指導で「診療録の記載不備」は毎年上位の指摘事項です 。実際に指摘されやすいポイントを整理しておくと、日常業務のセルフチェックに役立ちます。 koyu-ndu.gr(https://koyu-ndu.gr.jp/home/?page_id=833)
厚生局が指摘しやすいカルテ記載の問題点は以下のとおりです 。 kouseikyoku.mhlw.go(https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tohoku/news/000240527.pdf)
- 診療録の記載漏れ・不足:処置は行ったがカルテに反映されていない
- 傷病名の記載ミス:独自略称の使用、定められた略記号以外の使用
- 保存年限の管理不備:5年を待たずに廃棄、または管理体制が不明確
- 訂正方法の誤り:修正テープや塗りつぶしによる訂正
- 署名・押印の欠落:担当医師の確認なしで記録が完結している
- 歯科衛生士業務記録の未作成:算定はしているが記録書類が存在しない
カルテ記載の不備は、そのまま「診療報酬の不正請求」とみなされるリスクがあります。厳しいところですね。
対策として有効なのが、月1回の院内カルテチェックです。担当スタッフ全員で「記載漏れチェックリスト」を作成し、算定点数と記載内容の整合性を定期的に確認する習慣をつけると、個別指導の際にも自信を持って対応できます。厚生局が公開している指摘事例PDFは実務的な内容で、研修素材としても活用できます。
参考リンク(厚生局の実際の指摘事例)。
電子カルテ・レセコンが普及したことで、「紙のカルテ時代のルールはもう関係ない」と思っているスタッフが一定数います。しかし、これは大きな誤解です。
電子記録においても以下の原則は変わりません 。 xn--zqs94lz4l2ooqzu(https://xn--zqs94lz4l2ooqzu.com/shika-hokenshidou4.html)
- 電磁的記録であっても担当医師の署名・確認は必要:受付が入力した内容を医師が確認せず放置するのはNG
- 修正履歴の管理:電子カルテで記録を削除・書き換えた場合、その履歴管理が求められる
- 記載のタイミング:電子でも「遅滞なく」記載が義務。まとめて翌日入力は規則違反になりうる
- バックアップ体制:データ消失に備えた定期バックアップと復旧手順の整備が必要
- アクセス権限管理:担当外のスタッフが他患者の記録を閲覧・編集できない設定にする
- 出力書式の確認:レセコン出力のカルテが所定の様式要件を満たしているか定期確認
- 患者への開示対応:患者から診療記録の開示請求があった場合、原則として応じなければならない mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb3404&dataType=1&pageNo=1)
電子カルテに切り替えたからといって、診療情報の開示義務や修正記録の保管ルールが消えるわけではありません。つまり紙も電子も義務は同じです。
これらの落とし穴は、IT化によって意識が薄れがちな部分であるため、スタッフ教育の機会を年1回程度設けることが推奨されます。院内ルールをマニュアル化しておくと、新人スタッフへの教育コストも大幅に削減できます。