リフォーム工事でも耳にする「瑕疵担保責任」という言葉、実はシステム開発においても重要な概念です。2020年4月に民法が改正されて「契約不適合責任」に変わったことで、発注者が取れる手段は増えた一方、知らないと損するルール変更も起きています。

「瑕疵(かし)」とは、目に見えない欠陥や不具合のことを指します。システム開発においては、納品されたシステムにバグや機能不足があった場合、受注者(開発会社)がその責任を負うという仕組みが瑕疵担保責任です。
参考)https://hnavi.co.jp/knowledge/blog/system-development-defect-warranty-liability_sales/
旧民法では「仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約の目的を達し得ないときは、注文者は契約を解除できる」と規定されていました。 つまり、発注者は欠陥があれば解除や修補を求められるというシンプルな構造でした。
重要なのは「瑕疵担保責任は、2020年4月1日の改正民法施行によって廃止された」という点です。 現在は「契約不適合責任」という新しい概念に置き換えられています。リフォームやシステム開発の契約書を見直す際は、どちらの制度が適用されるかを確認することが必要です。
参考)システム開発の瑕疵担保責任、契約不適合責任とは?違いや事例を…
2つの制度の違いは、名称だけではありません。実務に直結する違いを整理しておきましょう。
| 比較項目 | 瑕疵担保責任(旧法) | 契約不適合責任(現行法) |
|---|---|---|
| 起算点 | 納品・仕事完了時 | 不具合を発見した時点 |
| 請求期限 | 納品から1年 | 発見から1年(民法上の消滅時効は5年) hnavi.co(https://hnavi.co.jp/knowledge/blog/system-development-defect-warranty-liability_sales/) |
| 損害賠償範囲 | 信頼利益のみ | 信頼利益+履行利益 hnavi.co(https://hnavi.co.jp/knowledge/blog/system-development-defect-warranty-liability_sales/) |
| 代金減額請求 | ❌ なし | ✅ あり eloan.co(https://www.eloan.co.jp/reform/fp/869/) |
| 過失の証明 | 不要(無過失責任) | 発注者側の立証が必要 eloan.co(https://www.eloan.co.jp/reform/fp/869/) |
| 準委任契約への適用 | 限定的 | 成果完成型には適用可 hnavi.co(https://hnavi.co.jp/knowledge/blog/system-development-defect-warranty-liability_sales/) |
注目すべきは「履行利益」が損害賠償の対象に加わった点です。 例えば、納品日にシステムが稼働できなかったせいで営業利益が得られなかった場合、その見込み利益まで請求できるようになりました。これは受注者にとって大きなリスク拡大を意味します。
民法の「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」に。リフォームでの変更点(イー・ローン)
※リフォーム工事を題材に、旧法と新法の違いを発注者目線でわかりやすく解説しています。
すべてのバグが契約不適合責任の対象になるわけではありません。これが判断を難しくしているポイントです。
契約不適合に該当しやすいケース:
契約不適合に該当しないケース:
ポイントは「対応の速さ」です。 軽微なバグでも長期間放置すれば責任を問われます。逆に重大な不具合でも、迅速な修補対応があれば責任が認められないことがあります。
納入後の瑕疵(契約不適合)~解説システム開発法務(石下法律事務所)
※「瑕疵に該当する」「しない」の判断基準と修補請求・損害賠償の具体的な手続きを専門家が解説しています。
「うちは準委任契約だから責任を負わなくていい」という誤解は危険です。これは知らないと大きな損失につながります。
近年のシステム開発では「成果完成型」の準委任契約が増えています。 成果完成型とは、作業ではなく成果物の完成に対して報酬が支払われる形式です。この場合、準委任契約であっても実態は請負契約に近く、契約不適合責任に準じた判断がなされることがあります。
準委任契約で責任を問われないのはあくまで「履行割合型」です。 つまり、時間や作業量に対して報酬が発生する形式に限られます。契約の種類を確認するだけでは不十分で、「成果物を完成させる義務があるか」というポイントを確認しなければなりません。
参考)https://ec-orange.jp/ec-media/?p=21176
なお、準委任契約では契約不適合責任のかわりに「善管注意義務」を負います。 善管注意義務とは、専門家として期待される水準の注意を払って業務を行う義務です。義務を怠れば損害賠償の対象になるため、責任がなくなるわけでは決してありません。
検収後に発覚した不具合についても同様に注意が必要です。検収は「支払いのためのステップ」であり、検収後の修補義務を免除するものではないとされています。 検収が完了した後に深刻な不具合が発覚した場合も、補修や代替措置の義務が生じます。
実は、契約書の書き方ひとつで、これらの権利がすべて失われることがあります。知らないと数百万円単位の損失になりかねないポイントです。
民法の契約不適合責任は、「任意規定」です。 つまり、当事者間の合意があれば責任を縮小・免除する特約を設けることができます。例えば「引き渡しから6ヶ月以内の通知に限る」「軽微な不具合は免責」などの条項が契約書に盛り込まれていても、法律上は有効です。
参考)120年ぶりの民法改正がシステム開発に及ぼす影響・契約書見直…
リフォーム工事の契約書でも、以下のような免責条項が含まれるケースがあります。
これらは発注者にとって不利な条項です。契約書に印鑑を押す前に、専門家(弁護士や建築士)に確認を依頼することが重要です。 費用は数万円でも、トラブルが発生した際の損失は数十万〜数百万円になりえます。
参考)リフォームにおける瑕疵担保責任は契約不適合責任へ。どう変わる…
リフォームの場合、「住宅瑕疵担保責任保険」への加入が義務付けられるケースもあります。 2009年施行の「住宅瑕疵担保履行法」では、新築住宅を販売する業者に対して10年間の瑕疵担保責任保険への加入または保証金の供託が義務付けられています。リフォーム工事にはこの義務はありませんが、任意で加入できる保険があるため、大規模なリフォームの前に確認しておく価値があります。
リフォームにおける瑕疵担保責任は契約不適合責任へ。どう変わる?(Vベスト法律事務所)
※リフォーム工事に特化した視点で、契約不適合責任への移行による変更点と発注者の権利を詳しく解説しています。
トラブルは「契約後」よりも「契約書の作成段階」で防ぐのが最も効果的です。発注側・受注側それぞれが契約書に明記しておくべき内容を確認しておきましょう。
発注者(リフォームや開発を依頼する側)がチェックすべき項目:
受注者(リフォーム業者・開発会社)が記載しておくべき項目:
契約書の内容がそもそも曖昧だと、双方の認識にズレが生じてトラブルに発展します。 報酬の支払い時期や仕様変更時の対応方法は、特にトラブルになりやすいポイントです。
実際に起きた訴訟事例では、開発側の請負代金約1.15億円の請求が棄却されたうえに、発注側に前払金1,143万円の返還と損害賠償581万円の支払いが命じられたケースもあります。 契約書の整備は、こうした多額の紛争リスクを回避するための最も現実的な手段です。
システム開発における契約不適合責任・瑕疵担保責任との違い(東京スタートアップ法律事務所)
※実際の訴訟事例を踏まえ、契約書作成時に盛り込むべき条項を法律の専門家が詳しく解説しています。