プレキャストを「建物だけのもの」と思っているなら、あなたは30%以上のコストダウンチャンスを見逃しているかもしれません。

「プレキャスト(Precast)」は英語で「あらかじめ(Pre)成形する(cast)」という意味を持ちます。 つまり、土木・建設現場でコンクリートを流し込む「現場打ち」とは違い、工場でコンクリート部材を完成させておき、それを現場に運んで組み立てる製品・工法のことです。
参考)プレキャストコンクリート製品ってなあに? - 一般社団法人 …
土木分野でのプレキャスト製品は非常に多岐にわたります。
参考)プレキャストコンクリート工法のメリット11個|デメリットもあ…
リフォームとの関係で言えば、庭の排水工事・駐車場の排水溝工事・擁壁工事などで使われることが多い素材です。これらはほぼすべてプレキャスト製品が使われているといっても過言ではありません。
プレキャストコンクリートの略称は「PCa」と表記します。 「PC」と書くと「プレストレストコンクリート(Prestressed Concrete)」と混同するため、土木業界では区別のためにPCaと書くのが一般的です。つまり「PC工法」という表記が指すのはプレキャストではなく、鋼材で圧縮力を加えたプレストレスト工法である場合が多いのです。これは意外ですね。
現場打ち工法とは、文字通り工事現場で型枠を作り、そこにコンクリートを流し込んで部材を成形する従来の方法です。 対してプレキャスト工法は、工場で完成した部材を現場に持ち込んで組み立てるだけです。
違いをまとめると次のとおりです。
| 比較項目 | 現場打ち工法 | プレキャスト工法 |
|---|---|---|
| 品質 | 職人・天候によりバラつき | 工場管理で安定・均質 |
| 工期 | 型枠→打設→養生が必要 | 据付・組立のみで短工期 |
| コスト(直接工事費) | 規格品なら安い | 規格外は割高になる |
| 設計の自由度 | 高い(現場で調整可能) | 低い(規格内に限られる) |
| 天候への依存 | 雨・低温で品質が変わる | 屋内工場製造で影響なし |
| 廃材 | 型枠材など多く発生 | 型枠を再利用するため少ない |
現場打ちが向いているのは、複雑な形状や独自デザインが求められる場面、あるいは工場からの輸送距離が長く搬入コストが高くなるケースです。 一方でプレキャストは、規格サイズが使える排水工事・基礎工事・擁壁工事などで圧倒的に有利です。
参考)海洋土木で使用するプレキャスト工法とは?特徴とメリット・デメ…
プレキャスト工法のメリットは11個あると言われています。 リフォームや外構工事に関係が深いものに絞って説明します。
① 工期が大幅に短縮される
型枠製作→コンクリート打設→養生(最低でも数日)という工程をすべて工場でやってあるため、現場では「運搬して据え付けるだけ」です。 養生期間がゼロなので、完成後すぐに使用できます。たとえば駐車場の排水溝工事なら、現場打ちだと養生だけで1〜2週間かかるところ、プレキャスト製品を使えば即日使用開始も可能です。これは使えそうです。
② コストダウンにつながる
直接工事費はプレキャストの方が高い場合がありますが、間接費が大幅に削減されます。 具体的には仮設費・交通規制費・足場費・借地料などです。実際に集水桝1か所での比較では、30%以上のコストダウンが可能という事例もあります。
参考)プレキャストにすると、コストは高い?安い?|株式会社イビコン
③ 品質が安定している
工場管理された環境で製造されるため、職人のスキルや天気に品質が左右されません。 雨の日でも、新人作業員でも、常に同じ高品質な製品が届きます。品質のばらつきは現場打ちの大きな弱点ですが、プレキャストならそのリスクがありません。
④ 環境負荷が低い
型枠を繰り返し使えるため、産業廃棄物が少なくなります。 現場でのコンクリート打設が減ることで、工事中の騒音・振動・粉塵も抑えられます。近隣への配慮という面でも、プレキャストは優れています。
⑤ 人手不足に対応できる
日本の建設業界は深刻な人手不足ですが、プレキャスト化によって現場作業員を削減できます。 現場では設置・接合作業に特化でき、型枠大工・左官・コンクリート打設工など複数の職種が不要になります。これが基本です。
参考)https://www.shinko-web.jp/series/3856/
メリットばかりではありません。 デメリットを知らずに採用すると、後から後悔することになります。
① 接合部が弱い
プレキャスト部材同士をつなぐ接合部は、一体成形の現場打ちコンクリートより強度が低くなりやすいのが弱点です。 この問題に対処するため、PCaPC圧着工法(PC鋼材で部材を圧着接合する方法)が開発されています。阪神・淡路大震災や東日本大震災でも耐久性が確認されていますが、設計段階で接合部の強度計算を慎重に行う必要があります。
参考)プレキャスト・プレストレストコンクリート工法(PCaPC)と…
② 規格外デザインに対応しにくい
工場の型枠を再利用するため、製品のサイズ・形状は規格に縛られます。 「変形した敷地に合わせて斜めに排水溝を作りたい」「コーナー部分を特殊な角度にしたい」といった要望には、現場打ちの方が向いています。規格外の専用型枠を作ると、かえってコストが膨らむ場合があります。厳しいところですね。
③ 輸送コストと大型クレーンが必要
工場製品を現場に運ぶ輸送コストが発生します。 工場と現場が遠い場合はこのコストが無視できません。また、重量のある大型部材を据え付けるためにクレーン車が必要になるケースもあり、狭い現場や路地裏での施工では制約が大きくなります。
④ 設計変更に弱い
工事が始まった後に設計変更が生じると、工場で製造済みの部材が無駄になります。 現場打ちなら型枠を調整して対応できますが、プレキャストは最初から作り直すしかありません。着工前の綿密な設計確認が欠かせません。
「プレキャスト=大規模な公共工事」とイメージしている人が多いですが、実はリフォームの現場でも日常的に登場します。意外ですね。
外構リフォームや庭工事で登場するプレキャスト製品の代表例を挙げます。
これらはすべてプレキャスト製品です。 外構業者に「排水工事をお願いしたい」と伝えると、ほぼ確実にプレキャスト製品が使われます。つまり、あなたはすでにプレキャストのお世話になっている可能性が高い。
リフォームの際に外構業者に「現場打ちとプレキャスト、どちらが適していますか?」と質問できるだけで、提案内容を深く理解できます。特に、コストの見積もり内訳を確認する際に「間接工事費はどのくらいですか?」と聞けると、適正価格かどうかの判断材料になります。
プレキャスト製品の品質・規格については、全国コンクリート製品協会(全コン)が詳しい情報を公開しています。選定の参考にしてみてください。
一般社団法人 全国コンクリート製品協会|プレキャストコンクリート製品の基礎知識と規格情報(H3:リフォームと製品選定の参考に)
プレキャスト工法は近年、国土交通省が積極的に普及を推進している工法です。 背景には建設業界の深刻な人手不足と、生産性向上の必要性があります。
2017年4月、国土交通省は全国の地方整備局に通達を出しました。 内容は「工法のコスト比較では、工期に比例して増減する仮設費・交通規制費を考慮するように」というもの。それ以前は直接工事費だけで比較されていたため、プレキャストが不利に扱われることが多かったのです。この通達によって、間接費を含めた正しいコスト評価ができるようになりました。
国土交通省は「土木工事におけるプレキャスト工法の活用事例集(第二版)」も公開しており、橋梁・道路・トンネルなど多くの公共工事での活用事例が掲載されています。
参考)https://www.mlit.go.jp/tec/content/001474498.pdf
プレキャストコンクリートが全セメント消費量に占める割合は、2014年度以降、おおよそ13〜14%水準で横ばいが続いています。 欧米と比較すると普及率はまだ低く、今後も国策として推進されることが予想されます。
リフォームの見積もりで「プレキャストを使った方が工期が短くなる」と説明された場合は、この背景を理解した上で前向きに検討する価値があります。間接費の削減や工事中の不便さを短くできる点は、生活しながらのリフォームでは大きなメリットです。
国土交通省|土木工事におけるプレキャスト工法の活用事例集(第二版)(H3:国の推進方針と活用事例の参考資料)

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