TIG溶接を「屋外のリフォーム現場でも気軽に使える」と思っていませんか?実は、TIG溶接は風速2m以上の屋外では溶接品質が大幅に低下し、手すりや外構のリフォーム補修が失敗に終わるリスクがあります。

TIG溶接の「TIG」は「Tungsten Inert Gas(タングステン不活性ガス)」の略です。 アーク溶接の一種で、タングステン電極と母材の間に発生させた電気アーク(放電)の熱で金属を溶かして接合します。
参考)ティグ(TIG)溶接
特徴的なのは、電極に使われるタングステンの融点が金属中で最も高い約3,370℃という点です。 そのため電極自体は溶けず、母材だけを溶かすことができます。つまり「消耗しない電極」で溶接するということですね。
参考)メタルワークス【TIG溶接 ステンレス】 - 金属加工 修…
溶接部はアルゴンガスなどの不活性ガスで覆われます。これにより、溶融した金属が空気中の酸素や窒素と反応して酸化・窒化するのを防ぎます。 仕上がりがきれいになる理由は、このガスシールドにあります。
作業の手順としては、大まかに以下の流れです。
参考)TIG溶接とは?メリット・デメリットや作業手順・上達のコツを…
溶接棒を片手、トーチをもう片手で操作するため、両手を使う溶接法です。これが「TIG溶接は難しい」と言われる大きな理由のひとつです。
TIG溶接の最大の強みは「仕上がりの美しさ」です。 スパッタ(溶けた金属の飛散)がほとんど発生しないため、溶接後の後処理が少なく、ステンレスや薄板の溶接に特に適しています。
参考)TIG溶接・スポット溶接加工 - 関西の精密板金の加工・曲げ…
リフォームの現場でよく見かけるステンレス製の手すりや笠木、外構フェンスなどはTIG溶接で補修されることが多いです。 仕上がりの見た目がきれいなので、表面に出る部材の溶接・補修に向いています。これは使えそうですね。
主なメリットをまとめると以下のとおりです。
参考)TIG溶接とは?特徴・メリット・用途をわかりやすく解説|株式…
| メリット | 内容 |
|---|---|
| スパッタなし | 火花が飛ばず養生が少なくて済む |
| 美しい仕上がり | 溶接ビードが均一でサビに強い |
| 多材料対応 | 鉄・ステンレス・アルミ・銅など幅広く溶接可能 |
| 薄板に強い | 0.5mm程度の薄い金属も溶接できる |
| 静音性 | 作業音が小さく住宅密集地でも使いやすい |
ステンレスは加熱により「鋭敏化」と呼ばれるサビが発生しやすい状態になる場合がありますが、TIG溶接は入熱量をコントロールしやすいため、この点でも優れた溶接法とされています。
TIG溶接には明確なデメリットもあります。正直に言えば、「誰でもすぐ使いこなせる」溶接法ではありません。
最大のデメリットは溶接速度が遅いことです。他のアーク溶接(MIG溶接・被覆アーク溶接)と比べると施工時間がかかるため、広い面積の溶接には不向きです。 また、作業者の技量が仕上がりに直結します。
厳しいところですね。
もうひとつ見落としがちな点が、屋外での使用に向かないという特性です。 TIG溶接で使用するアルゴンガスは風に非常に弱く、外気の風でシールドガスが乱れると溶接品質が急激に低下します。リフォーム現場のように屋外で作業する場合は、防風対策が必要です。
デメリット一覧はこちらです。
溶接中に発生する溶接ヒューム(金属の微粒子を含む煙)も見逃せません。厚生労働省は溶接ヒュームを特定化学物質として指定しており、屋内での溶接作業には局所排気装置の設置や防じんマスクの着用が義務付けられています。 健康リスクに注意が必要です。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000727559.pdf
厚生労働省:溶接ヒュームの特定化学物質指定に関するQ&A(PDF)
上記リンクでは、溶接ヒュームの濃度測定義務や健康管理の詳細が解説されています。
「趣味や自宅リフォームでTIG溶接をやるだけなら資格は不要」と思っている方が多いですが、業務として行う場合は話が変わります。
業務としてアーク溶接(TIG溶接はアーク溶接の一種)を行う場合、「アーク溶接等の業務に係る特別教育」の受講が法律で義務付けられています。 これを守らなかった使用者(会社)には、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されるリスクがあります。
参考)ティグ(TIG)溶接とは|資格・作業のコツ・溶接機の仕組みを…
個人のDIYや趣味であれば資格は必要ありませんが、以下の場合は必ず資格・免許が必要です。
参考)溶接は資格無しでできる?免許が必要な時とは - 株式会社影…
「特別教育」は国家資格ではなく講習形式で取得できます。 受講期間はおよそ3日間、費用は1〜2万円程度が目安です。リフォーム業者に勤める方や、業務で溶接に関わる方は必ず確認してください。
ティグ(TIG)溶接とは|資格・作業のコツ・溶接機の仕組みを解説
資格取得の流れや特別教育の詳細について詳しく解説されています。TIG溶接を業務で行う前に確認を。
資格の有無に関わらず、安全装備は必須です。遮光ガラス付き溶接面・革手袋・難燃性作業着・溶接用保護メガネを必ず用意してください。
リフォーム工事では、TIG溶接が活躍する場面が複数あります。知っておくと業者選びや見積もり確認に役立ちます。
代表的な活用場面はこちらです。
リフォームでTIG溶接を依頼する際に確認したいポイントは「屋外か屋内か」です。 先述のとおり屋外溶接はアルゴンガスが風に弱いため、防風ブースの設置や天候の確認が必要です。業者に「屋外溶接の風対策はしていますか?」と一言確認するだけで、仕上がりの品質が大きく変わります。
また、ステンレス手すりの補修後は研磨仕上げが必要です。 溶接部分をグラインダーや研磨ペーパーで磨いて、周囲のヘアライン仕上げに合わせる工程が含まれます。見積もりにこの研磨費用が含まれているか確認することをおすすめします。
TIG溶接の施工実績があり、アーク溶接特別教育を修了した作業員が在籍している業者かどうかも、業者選びの判断基準になります。資格の有無を聞いてみることは、決して失礼ではありません。
キーエンス 溶接革命:ティグ(TIG)溶接の基礎知識
TIG溶接の電流の種類(直流・交流・パルス)や用途別の選び方について、図解つきで詳しく解説されています。業者との打ち合わせ前に読むと理解が深まります。