あなたがCLTを知らないと、同じ予算で耐震も光熱費も損するかもしれません。
CLTは「Cross Laminated Timber(クロス・ラミネイティド・ティンバー)」の略称で、日本語では直交集成板と呼ばれる木質パネルです。 ひき板(ラミナ)を繊維方向が直交するように3層以上交互に積層・接着して、壁や床に使える大判のパネルにしたものがCLTです。 一般的な厚さは90ミリから300ミリ程度で、縦2〜3メートル、横5〜10メートルクラスの板を工場で製造し、現場ではプレカットされた巨大な「パネル」を組み立てて建物をつくります。 はがきの横幅が約15センチなので、厚さ90ミリのCLTははがきの短辺より少し薄い程度の「厚板」が何層も重なっているイメージです。
参考)https://clta.jp/clt/
つまり板を交差させた分厚い木の壁ということですね。
従来の在来木造は、柱と梁、そして筋かいで水平力に抵抗する「フレーム構造」が基本でしたが、CLTは壁・床そのものが面で荷重を受ける「面構造」に近く、鉄筋コンクリート造や鉄骨造に近い感覚で設計できます。 木材は繊維方向に強く、繊維直角方向に弱い性質がありますが、CLTでは繊維方向を直交させることで、縦・横の強度と寸法安定性を確保し、変形や割れを抑えやすくなっています。 これにより、中・大規模建築や中高層建築への木造適用が現実的になり、学校やオフィス、集合住宅で木を見せる設計が増えています。 木造の弱点だった「大スパン」「中高層」がCLTでカバーされつつあるということです。
参考)https://spaceshipearth.jp/clt/
断熱性や調湿性でもCLTは注目されています。 厚い木の層が熱をゆっくり伝えるため、コンクリートに比べて室温変化が緩やかで、暖房・冷房の立ち上がりや持続性に違いが出やすいのが特徴です。 例えば、コンクリートスラブ厚200ミリの床と、厚さ150ミリのCLT床を比較した実験では、CLT床の方が表面温度の変化が小さく、冬場の足元の冷えを抑えやすい傾向が報告されています。 もちろん、断熱材の仕様や開口部の性能に大きく左右されるものの、「厚い木の塊」がそのまま断熱層の一部として働くのがCLTの特徴です。 断熱と構造を一体化できる材料ということですね。
参考)https://biz.homes.jp/column/topics-00248
リフォームや新築でCLTを検討するとき、多くの人が「木だから安いはず」と考えますが、実際には一般的な在来木造より材料単価が高くなることが多いです。 2020年代の事例では、CLTパネルの材料費は在来木造の構造材に比べて1.2〜1.5倍程度になることが多く、規模や仕様によっては鉄骨造と同等、あるいはそれ以上の見積もりになるケースも報告されています。 例えば延床面積100平方メートル程度の住宅で、構造部分をCLTに変更すると、構造躯体だけで数十万円から100万円前後のコストアップになることもあります。 コストは必ず事前に試算が必要です。
参考)https://biz.homes.jp/column/topics-00248
一方で、国や自治体の補助制度をうまく使うと、コストアップの一部を補えるケースがあります。 国土交通省の「木材利用促進に関する支援」や、地方自治体の木造・木質化推進補助金では、CLTを含む大断面集成材や中大規模木造の建設に対して、1件あたり数百万円規模の補助が出る事例もあります。 例えば、ある自治体の公共建築物木質化補助では、対象建物の延床面積1平方メートルあたり2万円の補助上限が設定され、延床1000平方メートルなら最大2000万円が補助される制度が運用されていました。 補助金で構造コストの差額をほぼ吸収できる例もあるということですね。
参考)https://www.obayashi.co.jp/carbon_neutral/magazine/detail/clt.html
リフォームの場合、部分的にCLTパネルを導入するケースでは、材料費の割高感よりも「設計・監理費」「構造計算費」が増える点に注意が必要です。 CLTを使うと建築基準法上の取り扱いが在来木造と異なる部分が出てくるため、告示に基づいた構造計算や防火検証が必要になり、その分の設計コストが数十万円単位で上乗せされることがあります。 例えば、耐震改修を兼ねたリフォームでCLT耐力壁を追加する場合、壁そのものよりも構造設計と確認申請対応の費用が重く、総額で100万円規模の差になる例も報告されています。 設計費も含めたトータルコストで比較することが基本です。
参考)https://www.e-zumen.jp/blog_36.html
時間コストの観点では、CLTはプレファブ化しやすい材料であり、工場でパネルを製作して現場では組立に集中できるため、現場工期を2〜3割短縮できたという実例が複数あります。 例えば、延床3000平方メートルのオフィス建築で、鉄骨造に比べて現場工期を約1カ月短縮し、その分仮設費や現場管理費を削減できた事例が報告されています。 リフォーム現場でも、住宅1棟あたり数日の短縮にとどまる場合から、雨仕舞い期間を1週間以上短縮できたケースまで幅がありますが、足場・仮住まい期間の短縮に直結するため、施主の生活ストレス軽減にもつながります。 工期短縮が家計と暮らしの両方に効くというわけですね。
参考)https://spaceshipearth.jp/clt/
補助金や減税を逃すリスクも見過ごせません。 CLTを含む木造・木質化の支援制度は、公募期間や予算上限が設定されていることが多く、応募が集中すると数カ月で予算が埋まって終了することもあります。 例えば、ある年度の木材利用促進事業では、募集開始から3カ月ほどで予算上限に達し、新規受付が停止された事例がありました。 「いつかCLTで増築を」と考えているうちに支援枠がなくなる可能性もあるため、情報収集と設計事務所への早めの相談が重要です。 補助金には期限があります。
参考)https://www.obayashi.co.jp/carbon_neutral/magazine/detail/clt.html
CLT建築と国の支援制度の概要
住宅建築で注目を集めるCLTとは? メリット・デメリットや国の支援を解説
耐震性について、CLT建築は「厚い木の壁が一体となって揺れに抵抗する」構造であり、面で支えるために変形を抑えやすいという特長があります。 国土交通省の告示に基づくCLT工法では、壁配置やパネル厚、接合部の仕様に応じて地震時の応答が評価され、実験では在来木造に比べて層間変形角を小さく抑えられたケースも報告されています。 例えば、3層建てのCLT建物に対する振動台実験では、最大加速度を与えた際の層間変形角が1/200程度に収まり、倒壊に至らなかった結果が示されています。 面で踏ん張る構造ということですね。
参考)https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/cltmadoguchi/pdf/shiryou1.pdf
一方で、リフォームで「一部だけCLT」を入れる場合には、既存の構造との相性に注意が必要です。 既存の在来木造部分と新設のCLTパネル部分で剛性に差が出ると、地震時の変形が偏り、CLTの周りの在来部分に負担が集中する恐れがあります。 例えば、リビングの一面だけをCLT耐力壁に置き換えた場合、その壁が硬すぎて、隣接する既存柱や土台に大きな力がかかり、思わぬ損傷を招く可能性があります。 部分的な剛性バランスが重要です。
参考)https://www.e-zumen.jp/blog_36.html
耐火性については、CLTは表面が炭化して内部を守る「炭化層」の性質を利用して、一定時間の耐火性能を確保できるよう設計されています。 火災時には、表層の数センチが炭化し、その炭化層が断熱層として内部の温度上昇を抑えるため、規定の炭化速度を踏まえて板厚を決めるのが一般的です。 例えば、30分耐火が必要な壁では、炭化層として20ミリ、残りの有効断面として70ミリを確保するなど、板厚90ミリ以上が指定されるケースがあります。 CLTなら違反になりません。
参考)https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/cltmadoguchi/pdf/shiryou1.pdf
ただし、防火上の制限が厳しい準防火地域や防火地域では、CLTを露出したまま使える範囲が限られており、防火構造認定に基づいた仕上げを施す必要があります。 例えば、外壁にCLTを用いる場合でも、石膏ボードや耐火ボードで覆って認定仕様に合わせることが求められるため、「木を見せたい」という設計意図と防火規制のバランスを取る必要があります。 これを知らずにリフォームで外壁CLTを露出させようとすると、完了検査で指摘され、追加工事で数十万円の出費が発生することもあり得ます。 防火仕様は事前確認が原則です。
参考)https://biz.homes.jp/column/topics-00248
耐震・耐火・防音のいずれも、「CLTを使えば自動的に高性能になる」というものではなく、告示や認定仕様に沿った設計と、既存建物とのバランスを取ることが重要です。 リフォーム前に構造設計者や防火に詳しい設計事務所と相談し、シミュレーションや詳細図面を確認しておくことで、後戻りのコストや工期のロスを減らせます。 耐震と防火の両面で専門家の関与が必須です。
参考)https://www.e-zumen.jp/blog_36.html
CLT建築のメリットとしてまず挙げられるのは、木材ならではの温かみと、構造体をそのまま仕上げに活かせるデザイン性です。 壁や天井をCLTのまま見せる「現し仕上げ」では、内装材や下地材を減らせるため、仕上げコストを抑えつつ、木の質感を活かした空間をつくることができます。 例えば、天井高さ2.4メートルのリビングの天井をCLT板現しにすると、木目がそのまま見えるため、カフェのような雰囲気を自宅で再現できます。 木の質感を最大限に活かせるということですね。
参考)https://spaceshipearth.jp/clt/
構造面では、パネル化による施工性の高さがメリットです。 工場で寸法通りにカットされたCLTパネルを現場でクレーンや簡易揚重機で組み立てるため、現場での加工工程が少なくなり、天候の影響を受けにくい施工が可能です。 例えば、延床200平方メートルの木造2階建て住宅で、在来工法では建て方に3〜4日かかっていたところ、CLTパネル工法では2日程度で骨組みを立ち上げたケースも報告されています。 工期短縮は居住者の負担軽減にもつながります。
参考)https://www.obayashi.co.jp/carbon_neutral/magazine/detail/clt.html
一方のデメリットとしては、前段でも触れたように、材料コストと設計コストが上がりやすい点があります。 また、CLTは大判パネルを扱うため、搬入経路やクレーン設置スペースの確保が難しい狭小地では、かえって施工が複雑になることもあります。 例えば、4メートルの道路に面した都心の狭小敷地で、大型トラックとクレーンを使った搬入が難しく、パネルを小割りにして運び込んだ結果、メリットだったはずの施工性が薄れてしまった事例もあります。 現場条件次第でメリットが変わるということですね。
参考)https://biz.homes.jp/column/topics-00248
リフォームでCLTを活かす方法としては、「部分的な耐震補強+意匠性アップ」というアプローチが有効です。 既存の筋かい壁や合板耐力壁をCLT耐力壁に置き換えることで、耐震性能を高めながら、室内側に木質の仕上げ面を露出させ、デザイン性を向上させることができます。 例えば、築30年の木造住宅で、耐震診断の結果足りていない耐力を補うために、リビングとダイニングの間仕切り壁を厚さ90ミリのCLTパネルに変更し、兼用の耐力壁として使うケースがあります。 耐震補強と内装リニューアルを一体で進められる点がメリットです。
参考)https://spaceshipearth.jp/clt/
もう一つの活かし方は、増築やロフト追加などの「上方向」のリフォームです。 CLTパネルは重量あたりの強度が高く、鉄骨やRCに比べて自重が軽いため、既存建物への負担を抑えながら増築を行いやすいという利点があります。 例えば、既存の平屋住宅にCLTパネルを用いてロフトや小屋裏収納を追加し、荷重を分散させながら空間を拡張する事例が見られます。 既存の基礎や柱の余裕度を確認したうえで計画すれば、比較的短期間で上階を増やすことが可能です。 上方向リフォームとの相性が良いということですね。
参考)https://www.obayashi.co.jp/carbon_neutral/magazine/detail/clt.html
CLTをリフォームに取り入れる際、あまり語られない独自のポイントとして「音の質」と「香り・空気感」があります。 木質の厚いパネルは、コンクリートに比べて音の反射特性が異なり、室内の響き方や残響時間に違いが生じます。 例えば、CLTを露出した天井のリビングでは、音が柔らかく拡散されるため、同じ広さのコンクリート天井の部屋に比べて、会話の聞き取りやすさが向上したという居住者の声が報告されています。 音の質が変わるということですね。
参考)https://spaceshipearth.jp/clt/
香りや空気感については、CLTが木材である以上、使用する樹種によって独特の香りが室内に広がります。 スギやヒノキを使ったCLTでは、施工直後から数カ月間、木の香りがはっきり感じられ、その後ゆるやかに落ち着いていくケースが多いとされています。 例えば、延床100平方メートル程度の住宅で、リビングと寝室の壁・天井をスギCLT現しにした場合、入居後1年程度は来客が「木の香りが心地いい」とコメントすることが多いという報告があります。 これは使えそうです。
参考)https://www.e-zumen.jp/blog_36.html
一方で、木の香りに敏感な人やアレルギー体質の人にとっては、香りが強すぎると感じることもあるため、事前にショールームやモデルハウスで体験しておくことが推奨されます。 また、CLTは工場で接着剤を用いて製造されるため、JAS規格に基づきホルムアルデヒド放散量が管理されていますが、それでも敏感な人にとっては気になる場合があり、換気計画や内装仕上げの選定が重要になります。 例えば、24時間換気の計画風量を確保しつつ、室内側に一部だけ木を見せるデザインにすることで、香りと空気質のバランスを取ることができます。 換気と材料選びが条件です。
住み心地の観点では、CLTの蓄熱性と調湿性が、冬の暖かさと夏の涼しさに寄与するケースがあります。 厚い木のパネルが室温変化を緩やかにし、エアコンや床暖房のオン・オフの頻度を減らせる可能性があるため、光熱費の変化に敏感なリフォームユーザーにとって魅力的なポイントです。 例えば、同じ断熱仕様でCLTと在来木造を比較したモデルハウス実験では、冬期の夜間室温の低下がCLTの方で1〜2度小さかったという報告があります。 調湿性と蓄熱性の両方が効いているということですね。
参考)https://biz.homes.jp/column/topics-00248
独自視点としてもう一つ挙げたいのが、「林業への貢献」という間接的なメリットです。 CLTは国産材の利用拡大に直結しやすく、特にスギやカラマツなどの針葉樹を活用することで、間伐材や低質材の有効利用につながります。 例えば、延床200平方メートルのCLT住宅1棟で、スギ丸太に換算して数百本分の木材を使用するケースもあり、その分だけ山林の循環利用に寄与していると評価されます。 環境配慮と地域経済への波及効果も含めて「住み心地」を考える材料と言えるでしょう。
参考)https://www.obayashi.co.jp/carbon_neutral/magazine/detail/clt.html
CLTを使ったリフォームで失敗しないためには、計画段階で押さえておきたい実務的なポイントがいくつかあります。 まず重要なのが「どこまでCLTを使うか」という範囲の決め方です。 すべてをCLTに置き換えるのではなく、耐震上重要な壁や床、デザイン上のアクセント部分など、ポイントを絞って採用することで、コストと施工性のバランスを取りやすくなります。 CLTはピンポイントで活かす材料ということですね。
参考)https://www.e-zumen.jp/blog_36.html
次に、構造設計と建築確認の段取りです。 CLTを使う場合、国交省告示や一般社団法人日本CLT協会の技術資料をベースにした構造設計が必要で、在来木造の経験しかない設計者では手戻りが発生するリスクがあります。 例えば、リフォームでCLT耐力壁を追加する計画を立てたものの、確認申請の段階で必要な技術資料や実験データの提示が求められ、構造事務所への再依頼で数十万円と数週間のロスが出た事例が報告されています。 構造設計の経験者を早めにチームに入れることが条件です。
生活への影響を抑えるためには、仮住まいや工事中の生活動線の確保も欠かせません。 CLTパネルを使う工事では、短期間で構造が変わるため、一時的に出入りできない部屋や通路が発生しやすく、家族構成や在宅勤務状況によってはストレスが大きくなります。 例えば、リビングのCLT化工事を3日間で行う計画でも、その間はリビングが使えないため、仮のリビングスペースをどこに用意するか、キッチンとの動線をどう確保するかを事前にシミュレーションする必要があります。 工事中の暮らし方を設計段階で描くことが原則です。
参考)https://www.e-zumen.jp/blog_36.html
最後に、メンテナンスと将来のリフォーム余地についても考えておくと安心です。 CLTを露出した内装は、紫外線やキズにより経年変化しますが、オイル仕上げやクリア塗装で表面保護を行うことで、変色や汚れをある程度抑えられます。 また、将来壁を抜きたい、開口を増やしたいといった希望が出たときに備えて、どのCLTパネルが耐力壁で、どこまでなら開口可能かを図面とメモで残しておくと、次のリフォーム時の判断がスムーズです。 将来の変更余地を含めて計画することが重要です。
参考)https://spaceshipearth.jp/clt/
CLTリフォームの実務ポイントを整理した情報源としては、日本CLT協会や大手建設会社の技術解説ページが役立ちます。 具体的な施工事例や工法の工夫も掲載されているため、リフォームのイメージ作りに活用できます。
参考)https://clta.jp/clt/
CLT技術と施工の実務解説
木造建築の可能性を広げる「CLTユニット工法」ってなに?建設・・・
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