スパイラルチューブはMRI室に持ち込むと金属ワイヤーが発熱し、気管粘膜に火傷を負わせる危険があります。

医療用スパイラルチューブとは、気管チューブ(気管内チューブ)の一種で、チューブ内部に細い金属ワイヤーをらせん状に組み込んだ補強型の気道確保デバイスです。 通常の気管チューブが柔らかいシリコンやPVC素材のみで作られているのに対し、スパイラルチューブは金属コイルによる補強が加わっています。 これにより、チューブを強く曲げたり体位変換をしても「キンク(閉塞)」が起きにくい設計になっています。
参考)スタッフ向け 気管チューブ:スパイラルチューブについて - …
一般的な気管チューブは、内径(ID)6.0〜8.0mm前後のサイズが成人向けに使われます。スパイラルチューブも同様のサイズ展開で、例えばパーカー社製スパイラルチューブはID 7.0mmが標準的に採用されます。
参考)医療関係者の皆様 - 安全への取組み(各種調査・機器不具合情…
構造の大きな特長はここにあります。柔軟性と強度を両立させた設計が、特殊な体位での手術を支えています。
スパイラルチューブは、主に気管チューブに強い屈曲がかかる場面で使用されます。 最も代表的な使用シーンは「腹臥位手術」です。腹臥位とは患者をうつぶせにした体位で、この体位では顔が横や下を向き、口元のチューブが大きく曲がりやすくなります。
参考)130171850
以下のような手術領域でスパイラルチューブが活躍します。
これが基本です。気管チューブの屈曲が命にかかわるため、形状維持が最優先の場面でスパイラルチューブが選ばれます。
スパイラルチューブにはとても重要な注意点があります。内部の金属ワイヤーが原因で、MRI検査が絶対禁忌になるという点です。
参考)https://safety.kuhp.kyoto-u.ac.jp/wp-content/uploads/2025/04/0c03a89a3d51d6a9135cad125d92de71-1.pdf
MRI装置は強力な磁場と電磁波を使って画像を撮影します。この磁場の影響により、スパイラルチューブ内の金属ワイヤーに次の2つの危険が生じます。
実際に、京都大学病院の医療安全情報では「スパイラルチューブで挿管された患者がMRI検査に出棟しかけた事例」が複数報告されています。 ある病院では脳腫瘍再発患者でその認識が欠けたまま検査に出棟しようとし、位置決め画像で異常を発見して未然に防いだ事例もあります。
参考)https://ishinkai.or.jp/hospital/wp-content/uploads/2020/10/safety-news11-3.pdf
これは痛いですね。認識のズレが一つあるだけで、患者の命にかかわる重大事故に直結します。
「補強型チューブだから屈曲しない」と思われがちですが、これは誤解です。
参考)パーカースパイラル気管チューブで報告された事例に関するお知ら…
日本麻酔科学会や機器メーカーから報告された事例では、パーカー社製スパイラルチューブ(ID 7.0mm)を耳鼻科手術で使用中、呼吸回路の位置を動かした後に気道内圧が上昇する事故が発生しました。 チューブを調査した結果、金属ワイヤーコイルと「スリップジョイント(接続部)」の間にコイルが入っていない部分があり、そこに強い力が集中して屈曲していたことが判明しています。
つまりこういうことです。補強材のない接続部分は、スパイラルチューブでも折れ曲がるリスクがある、ということです。
正しい取り扱いのポイントをまとめます。
| 確認ポイント | 内容 | 理由 |
|---|---|---|
| 接続部の位置 | スリップジョイント付近を鋭角に曲げない | 補強材がない部分に力が集中するため |
| バイトブロック | 挿管中は必ず使用する | 患者に噛まれると完全閉塞する恐れがある |
| 体位変換後 | チューブの位置と気道内圧を必ず再確認する | 動かした後に屈曲が生じている可能性がある |
| MRI搬送前 | 挿管チューブの種類を必ずダブルチェック | スパイラルチューブはMRI絶対禁忌 |
挿管後のルーティンチェックを徹底するだけで、多くの事故は防ぐことができます。
実はスパイラルチューブという名称は医療だけでなく、電気配線の保護部材としても広く使われています。 リフォーム工事の現場でも、配線をまとめたり保護したりする目的でスパイラルチューブが活躍しています。
参考)https://www.hagitec.co.jp/products/spiral-tube/c08-16062902.htm
医療用と電設用では素材と用途が全く異なりますが、「らせん状の構造で柔軟性と強度を両立する」という設計思想は共通しています。 これは使えそうです。リフォームで配管や配線の引き直し工事を依頼する際、業者に「スパイラルチューブで保護」と指定すると配線の耐久性が大幅に上がります。
参考)スパイラルチューブ
電設向けは使用温度が-10℃〜60℃で、材質は軟質ポリエチレンやナイロン、難燃性ナイロン、フッ素樹脂など多岐にわたります。 設置場所の温度環境や難燃要件に応じて素材を選ぶことが大切です。
リフォームで配線工事を依頼する際の確認事項としては、使用するスパイラルチューブの素材・内径・耐熱性の3点を業者に確認しておくと、後々のトラブルを防ぐことができます。特に台所や浴室周りの電気工事では、耐熱・難燃性素材のスパイラルチューブが使われているかどうかが重要な安全基準になります。
参考:医療用スパイラルチューブのMRI安全性に関する詳細情報(京都大学病院 医療安全情報146号)
京都大学医学部附属病院 医療安全情報 – スパイラルチューブとMRI安全管理
参考:補強型気管チューブの種類と使い分けの解説(看護roo!)
看護roo! – 気管チューブの種類は、用途によって異なるの?
参考:パーカースパイラル気管チューブの屈曲事例(日本麻酔科学会)
日本麻酔科学会 安全への取り組み – パーカースパイラル気管チューブの屈曲事例