申請不要でも、建築基準法への「適合義務」は消えません。
参考)https://www.mlit.go.jp/common/001299734.pdf

用途変更とは、既存の建物をもともと許可された目的とは異なる目的で使用することを指します。 たとえば、長年使ってきた事務所を飲食店に転用したり、空き家になった戸建て住宅を保育所や民泊施設として活用するケースがこれにあたります。
参考)『用途変更』とは|確認申請が必要な建物用途・規模を解説 &#…
建築基準法は、建物の用途ごとに適用される規制が異なります。 住宅は住宅向けの基準で建てられているため、不特定多数が出入りする店舗や宿泊施設としては、防火・避難・衛生面の基準が大きく異なる場合があります。法の第87条が用途変更の根拠条文です。
参考)https://www.city.amakusa.kumamoto.jp/kiji0031697/index.html
この「ルールが変わる」という部分が、用途変更において最も重要なポイントです。単にリフォーム工事をするだけではなく、変更後の用途に応じた建築基準法上の要件を満たす義務が発生します。 つまり、工事の有無とは関係なく、「何に使うか」が変われば手続きの対象になりうるということです。
確認申請が必要かどうかを判断する手順は、大きく3ステップに分かれています。
参考)【最近よく聞く「用途変更」とは?】建築基準法における「建物の…
ステップ1:変更後の用途が「特殊建築物」に該当するか
建築基準法別表第一(い)欄に列挙された用途に変更する場合に限り、確認申請の対象になりえます。主な特殊建築物には次のような用途があります。
ステップ2:「類似用途」への変更かどうか
上記に該当しても、建築基準法施行令第137条の18に定める類似用途相互間の変更であれば手続き不要です。 たとえばホテルから旅館への変更などがこれにあたります。
ステップ3:用途変更する床面積が200㎡を超えるか
2019年(令和元年)6月25日施行の建築基準法改正により、確認申請が必要となる面積基準が100㎡超から200㎡超へと引き上げられました。 200㎡以下であれば確認申請の手続きそのものは不要です。
面積の計算では注意が必要です。
> 「過去にその建物内で用途変更した面積を合算する必要があります。」
つまり、たとえば80㎡の用途変更を3回に分けて行った場合でも、合計240㎡となれば申請義務が生じる可能性があります。意図せず基準を超えてしまうケースがあるので注意が必要です。
国土交通省公式PDF:建築基準法改正による用途変更の手続き変更内容(200㎡以下不要化の詳細)
「申請なしでも見つからないのでは?」と考えるのは危険です。 建築基準法に違反した場合、行政による是正命令・工事停止命令の対象となり、それに従わない場合は3年以下の懲役または300万円以下の罰金という刑事罰が定められています。
参考)建築基準法違反となる違反建築物とは? 行政処分や罰則、責任の…
罰則が重いのはなぜでしょうか。
不特定多数が利用する建物には、万一の火災・地震時における安全確保が強く求められます。特殊建築物への用途変更は、避難経路・防火区画・消防設備など多くの安全基準を変更後の用途に合わせる必要があるため、無申請での変更は利用者全員に危険を及ぼしうる行為とみなされます。
また、確認申請が不要な200㎡以下の場合でも「建築基準法に適合している状態を保つ義務」は消えません。 消防法第17条に基づき、変更後の用途が防火対象物に該当する場合は消防署への届け出が別途必要です。 建築と消防、2つの法令を同時に確認することが原則です。
参考)用途変更する部分の面積が200m2以下の場合は確認申請が不要…
無申請で用途変更を行うと、売却・賃貸時にローン審査が通らなくなるリスクもあります。 金融機関は建物の適法性を確認するため、未申請の違反状態では担保評価が下がり、買い手・借り手がつかない事態も生じます。損失は罰金だけにとどまりません。
参考)【違法建築→検査済証なし→増改築・用途変更・ローンNG|規制…
確認申請が必要と判断した場合の手続きの流れは以下のとおりです。
参考)用途変更の確認申請とは?要否の判断基準や費用・流れを解説
1. 事前調査:対象建物の現況確認・法令チェック・必要書類の洗い出し
2. 書類・図面の準備:建物の現況図、変更後の用途に対応した設計図面の作成
3. 確認申請の提出:特定行政庁または民間の指定確認検査機関へ提出
4. 確認済証の交付:審査が通ると確認済証が交付される
5. 工事着工:確認済証取得後に工事を開始する
6. 完了検査・検査済証の取得:工事完了後に検査を受け、検査済証を取得する
費用についての目安です。
| 項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| 設計・申請費(建築士委託) | 20万〜80万円程度(建物規模・複雑さによる) |
| 確認申請手数料 | 数万円〜(規模・審査機関による) |
| 工事費 | 用途により大きく異なる(数十万〜数百万円) |
設計・申請作業は建築士が行う必要があります。 特に200㎡超の特殊建築物への変更では、防火・避難計画の専門的な検討が伴うため、早い段階で建築士に相談することが費用・時間両面でのリスク軽減につながります。
なお、用途変更後は「建物表題部変更登記」も必要です。 不動産登記法第51条により、変更から1カ月以内に法務局で登記手続きを行う義務があります。これを怠ると固定資産税の課税区分にも影響します。10万円以下の過料の対象にもなりえます。
リフォームに興味のある方がもっとも誤解しやすいのが、「工事をしていないから申請は関係ない」という思い込みです。
建築基準法の用途変更は、工事の有無とは無関係に「使い方が変わった時点」で規制が適用されます。つまり一切の改装工事をしていなくても、空き家の住宅を民泊や小規模な宿泊施設として使い始めた段階で用途変更の手続きが必要になりえます。
参考)用途変更や確認申請の手続きと流れを解説!マスターして建物を有…
逆に、工事を伴うリフォームでも用途が変わらなければ用途変更の手続きは不要です。これが条件です。
リフォームと用途変更が絡むケースには、たとえば次のようなものがあります。
「200㎡以下なら申請不要」という法改正の趣旨は、空き家活用の促進を目的としています。 ただし申請不要が「何でもできる」を意味するわけではなく、消防設備・避難経路・用途地域など多くの規制への適合確認は依然として必要です。
参考)進むか空き家対策、用途変更で200m2以下は確認申請不要に
リフォームを計画する際は、「何に使うか」を変えるかどうかを設計・施工会社と事前に確認する習慣が重要です。用途地域によってはそもそも希望の用途が認められない場合もあります。自治体の建築指導課や建築士に相談することで、無用なトラブルを防げます。
2019年法改正後の用途変更フロー図と申請要否チェック(達和不動産コラム)