位置がほんの数センチズレただけで、耐震強度が設計値の半分以下になることがあります。
ホールダウン金物とは、地震や台風の際に柱が土台や梁から引き抜かれるのを防ぐための補強金物です。 「引き寄せ金物」とも呼ばれ、木造軸組工法の建物で広く使われています。
この金物は基礎に埋め込んだアンカーボルトと、柱に固定する金物本体で構成されています。 基礎・土台・柱という3つの構造体を一体的につなぐのが役割です。つまり「地面から柱まで切れ目なく固定する」のが原則です。
設置場所は柱の下部(柱脚)と上部(柱頭)の両方が基本です。 柱脚だけに入れても、柱頭側が固定されていなければ地震の揺れで柱ごと外れてしまいます。柱頭・柱脚セットで機能する、ということですね。
1995年の阪神・淡路大震災では、木造住宅が多数倒壊しました。 被害調査で明らかになったのは、柱が土台から「ホゾ抜け」を起こして建物が崩れるケースが非常に多かったという事実です。意外ですね。
参考)ホールダウン金物とは?阪神・淡路大震災から学ぶ耐震性能アップ…
当時の建築基準法では、ホールダウン金物の設置義務は3階建て以上の建物のみでした。 つまり一般的な2階建て住宅には義務がなかったのです。その結果、2000年以前に建てられた住宅の多くにはホールダウン金物が入っていません。
参考)https://www.youtube.com/watch?v=PLGHpm2LPq0
2000年5月31日に施行された「建設省告示1460号」により、建物の階数に関係なくすべての木造建物でホールダウン金物の設置が義務化されました。 これが現在の基準です。
参考)https://www.ogawa-bco.co.jp/taishin/taishinkaishu/
重要なのは、2000年以前の住宅は金物が「ない」前提でリフォーム計画を立てる必要があるという点です。 リフォームの際に壁を開けて初めて金物がないことが発覚するケースも少なくありません。事前の耐震診断が条件です。
参考)https://www.youtube.com/watch?v=PLGHpm2LPq0
耐震診断を受けることで、設置位置の過不足を正確に把握できます。自治体によっては無料または補助金付きで耐震診断を実施しているので、まず市区町村の窓口を確認するのが最初の行動になります。
耐震診断に関する補助制度について詳しくは以下が参考になります。
アンカーボルトは「柱芯に近い位置」に正確に施工する必要があります。 しかし現場では施工誤差が発生することがあり、アンカー位置が数センチズレただけで大きな問題につながります。
参考)https://www.aimkk.com/product/kurupita.html
アンカーボルトの位置がズレると、座付ボルトの座金部分が柱と干渉します。 その結果、ボルトが斜めに曲がった状態でホールダウン金物と緊結されることになります。これは痛いですね。
参考)https://www.takumi-probook.jp/takumistaff/construction/trouble-hold-down-hardware
斜め施工になると規定の耐力がまったく発揮されません。 せっかく金物を入れても、地震の時に機能しないという状態です。費用をかけてリフォームしたのに耐震性能がゼロに近い、という最悪のケースに直結します。
参考)https://www.takumi-probook.jp/takumistaff/construction/trouble-hold-down-hardware
対策として、アンカーボルトの施工誤差を吸収する「位置調整金物」が製品化されています。 エイム株式会社の「くるピタ」などはその代表例で、ズレが生じた場合にも耐力を維持した施工が可能です。施工前に業者へ調整金物の使用有無を確認する、という行動が重要になります。
参考)https://www.kaneshin.co.jp/support/faq/details.php?id=1003218&q=41&t=1
エイム株式会社「くるピタ」:ホールダウン用アンカーボルト位置調整金物の詳細
上下階の柱をつなぐ場合、金物は横架材(梁)に密着させないように取り付けるのがルールです。 埋込み代は360mm以上確保することが定められています。これだけ覚えておけばOKです。
参考)http://www.takumi-probook.jp/tkbs/construction/const-halldown/post-263
すでに建てられた住宅でホールダウン金物が入っていない、あるいは位置がおかしいと判明した場合でも、後付けで対応する方法があります。これは使えそうです。
「外付けホールダウン金物」という工法では、壁を大きく解体することなく外側から金物を取り付けることができます。 大阪の中田リフォームの事例では、主要な柱4カ所に外付けホールダウン金物を1日の工事で設置しています。工期が短く、費用も全面耐震補強と比べてかなり抑えられる点がメリットです。
参考)https://www.nakata-r.com/8790/
ただし外付けホールダウン金物は「柱が土台から抜けるリスク」に対応するものであり、耐力壁の強化とは別の話です。 壁量が不足している場合には、別途筋交いや構造用合板の追加が必要になります。両方セットで考えるのが原則です。
参考)https://www.nakata-r.com/8790/
耐力壁を増設する際は、ホールダウン金物の同時設置が必須とされています。 壁が強くなると地震時に柱を引き抜こうとする力も大きくなるためです。壁補強だけ行って金物を入れ忘れると、かえって柱抜けのリスクが上がるケースもあります。
参考)https://fullhouse-giken.com/type/
耐震工事に詳しい専門業者への相談先として、以下のリンクが参考になります。
耐震リフォームでホールダウン金物を後から追加する場合、費用の目安は1か所あたりおよそ5万〜15万円程度が相場です。 4か所設置なら20万〜60万円の幅になります。「外付け工法」は工事期間が短く費用を抑えやすい一方、壁内への正規施工より制約が出ることもあります。
参考)https://www.nakata-r.com/8790/
フルリノベーションの場合、構造計算の結果によっては3.7トン用のホールダウン金物が複数か所必要になることもあります。 規格が大きくなるほど金物本体と施工費も上がります。耐震等級3を目指すケースでは、金物の配置計画が設計コストに直結するということですね。
参考)https://note.com/serene_marten969/n/nb0c0e0b25994
自治体によっては耐震改修工事に対して補助金が出ます。 国土交通省や各都道府県の補助制度を活用すれば、実質負担額を数十万円単位で抑えることが可能です。リフォームを検討する前に、居住している市区町村の補助金制度をまず調べる、という行動が最初のステップになります。
参考)https://www.ogawa-bco.co.jp/taishin/taishinkaishu/
| 工法 | 工期目安 | 費用目安(1か所) | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 外付けホールダウン金物 | 1日〜 | 5〜10万円 | 部分的な補強・解体を最小限にしたい場合 |
| 壁内への正規施工 | 3日〜 | 10〜15万円 | フルリフォーム・耐震等級取得を目指す場合 |
| 位置調整金物併用 | 正規施工に準じる | +数千〜1万円程度 | アンカーボルトのズレが判明した場合 |
匠の一冊:ホールダウン金物の施工トラブル事例(向きや位置ズレの影響を詳しく解説)
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