ポリエステルのストリングを緩く張ると、腕への負担が減るどころか肘を傷める確率が上がります。
ラケットの打球面に張られた糸状のものを、一般的に「ガット」と呼ぶ人が多いですね。しかし正確には、「ガット(GUT)」とは羊や牛の腸を原料とした天然素材のことを指します。
語源を遡ると、もともとはシープ(羊)の腸を使っていたため「シープガット」と呼ばれていました。その後、牛の腸に移行してから「ナチュラルガット」と呼ばれるようになっています。つまりガットが基本です。
一方、ナイロンやポリエステルなどの人工素材で作られた糸は、正式には「ストリング(String)」と呼びます。「string=ひも・糸」という英単語が語源です。現在市場に出回っているもののほとんどが人工素材のストリングであるため、業界内でも「ガット」と「ストリング」はほぼ同義として使われています。
実際のテニスショップでは「ガットの張り替えお願いします」と言っても「ストリングの張り替えお願いします」と言っても、どちらも通じます。ただし厳密には別物です。
ボールに直接触れるのはストリングだけという点は、意外と見落とされがちです。フレームにボールが当たればそれはミスショットであり、インパクトの瞬間はすべてストリングが仕事をしています。プレーの制御面で約6割がストリングに依存するという研究データもあるほど、ストリングはラケット性能の核心部分です。
参考)https://note.com/sts_lab/n/nd597ee43bd45
ガットとストリングの違いを詳しく解説(テニスショップADO)
テニスのストリングは大きく3種類に分けられます。それぞれ性質がまったく異なるため、自分のレベルとプレースタイルに合わせた選択が必要です。
参考)https://glowingta.com/20241216001/
| 素材 | 打球感 | 耐久性 | 価格帯 | 向いているプレーヤー |
|---|---|---|---|---|
| ナチュラル | ⭐⭐⭐⭐⭐(最高) | △ 湿気に弱い | 4,000〜10,000円以上 | 打球感を最重視する上級者 |
| ナイロン | ⭐⭐⭐(柔らかめ) | ○ 3か月が目安 | 800〜2,500円程度 | 初心者〜中級者全般 |
| ポリエステル | ⭐⭐(硬め) | ◎ 切れにくい | 1,200〜3,500円程度 | 強打型の上級者 |
ナイロンは最もポピュラーな素材です。柔らかい打球感で腕への負担が少なく、価格も手ごろなため、テニスを始めたばかりの方や週1〜2回プレーする一般プレーヤーに向いています。
ポリエステルは切れにくい反面、打球感が硬く、腕力がないと衝撃をもろに受けます。これが重要な点です。強くボールを叩ける上級者だからこそポリの性能を引き出せるのであり、力が伝わらない状態では「ただ硬くて腕に衝撃が大きいだけのストリング」になってしまいます。
参考)https://www.rakuten.co.jp/racket/contents/racket-maintenance/strings/
ナチュラルは打球感と飛び・スピン性能がトップクラスですが、湿度と乾燥に弱く、コストが高いのが欠点です。本格的なプレーヤーがパフォーマンス最優先で選ぶ場合に適しています。
結論は素材選びが最初の関門です。初心者はまずナイロンから入り、上達とともに自分の打ち方に合わせて変えていくのがスムーズな道筋です。
テンションとは、ストリングをどのくらいの力(ポンド数)で張るかを示す数値です。一般的には45〜60ポンドの範囲で張られることが多く、数値が上がるほど「硬い・飛ばない」、数値が下がるほど「柔らかい・飛ぶ」と理解するのが基本です。
ここで多くの人が誤解するポイントがあります。「テンションを上げるほど反発力が上がる」と思いがちですが、科学的には誤りです。実際には、テンションを高く張っても低く張っても、インパクト時にストリングが生み出すリアルテンション(実際の弾性力)には大きな差が生まれないことが研究で示されています。
参考)https://kawazoe-lab.com/tennis_racket/science-of-tennis-racket-700/
つまりテンションは「反発力の調整ツール」ではなく「打感・コントロール感の調整ツール」という認識が正確です。初心者がいきなり高テンションを選ぶと、飛ばないうえに腕への衝撃だけが増えるという状況になりやすいです。厳しいところですね。
初めてストリングを張る場合は48〜50ポンドをスタートラインにして、そこから3〜5ポンド単位で調整するのが、自分に合った設定を見つける近道です。
参考)https://www.t-para.com/?tid=6&mode=f8
ストリングの太さは「ゲージ」と呼ばれ、一般的には1.10mm〜1.35mmの範囲で販売されています。 太さが違うと、打球感・スピン性能・耐久性がすべて変わります。これは使えそうです。
参考)https://glowingta.com/20241216001/
特にポリエステル系ストリングを使う場合、縦と横で異なる太さを組み合わせる「ハイブリッド張り」を採用するプレーヤーもいます。例えば縦にポリ(1.25mm)、横にナイロン(1.30mm)を張ることで、スピン性能と打球感を両立する手法です。
よく切れてしまう場合の対処法としては、ゲージを1段階太くする方法が有効です。 切れる方向(縦か横か)のストリングだけを太くして、もう一方は従来通りにしておく方法なら、打球感の違和感を最小限に抑えながら耐久性を上げられます。
参考)https://www.tennissupportcenter.com/faq/gut.html
細ければ細いほど性能が上がるわけではない点だけ覚えておけばOKです。自分の打ち方・頻度・予算に合ったゲージを選ぶことが、コストパフォーマンスを最大化するコツです。
ストリングの寿命はよく「3か月」と言われますが、これには根拠がありません。 本来は、プレーヤー本人が「打ちにくい」「打球感が変わった」と感じた時点が実質的な寿命です。ただし目安として、ナイロンは3か月、ポリエステルは1〜2か月が張り替えの基準として使われています。
参考)https://kawazoe-lab.com/tennis_racket/science-of-tennis-racket-700/
ここで注目すべきなのがポリエステルの特性です。ポリは見た目が切れていなくても、テンションが急速に落ちて打球感が死んでいきます。張り替えサイクルが遅れると、テンションロスしたポリが腕・肘・手首に過剰な衝撃を与え、テニス肘などの怪我につながりやすくなります。
参考)https://glowingta.com/20241216001/
これはちょうど住宅のリフォームと同じ発想です。外壁や床が「見た目は問題なさそう」でも、素材の内側で劣化が進んでいるケースがあります。表面だけを見て判断すると、取り返しのつかない損傷になる点も共通しています。
張り替え時期を自分で管理するために、スマホのカレンダーやメモアプリで「張り替え日と使用素材・テンション」を記録しておく習慣が非常に有効です。次回の張り替え時に前回のデータと比較すれば、自分に合った最適なサイクルが見えてきます。
テニスの道具を良い状態に保つことが、プレーの質と体への負担の両方を管理することに直結します。ストリングのメンテナンスも、一種の「自分のテニス環境のリフォーム」として捉えると、より積極的に取り組めるはずです。
ストリング選びのよくある誤解を解説(まちがいだらけのストリングス選び)